夜の音

真夜中の病院に招かれた私は気配を殺し、ゆっくりと約束の場所へと向かう。
静かで…とても不気味だ。
こんな事を言うと「吸血鬼の癖に！」と返されそうだが吸血鬼でも怖いものは怖い。もし、おばけが出てきたら悲鳴を上げてしまうだろう。
そんな話を院長にすると笑われた。そして意外にも、多くの吸血鬼はそんなものだと話してくれた。
今日、この場に集まった他の吸血鬼達も頷く。深夜の病院は吸血鬼でも怖い。
そんな怖い思いをしてまでここに集まったのには理由がある。
使わず、破棄する予定の輸血用血液を頂く為である。
吸血鬼の為の血液SDGｓ。
人から直接吸血するのは衛生的に良くない。安全で安心な血液を手に入れるにはこれが一番。
あと、持ち帰りもNＧ。血液は痛みやすい。医療従事者の管理下で飲み切らなきゃならない。
飲み終わると来た時同様、音もなく病院を出ていく。
余りに静かなものだから、未だに噂にすらならないよ。