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母は眠れぬ夜、小説片手にジャムを煮込んでいた。
真夜中。台所から聞こえるコトコトという音が私は大好きだった。
その音と香りに目を覚ませば母は時々、煮詰めているジャムを試食させてくれた。
そんな母が亡くなって暫く経つ。今夜も台所では母の愛用のジャム鍋とジャム箆が勝手にコツコツと動き出す。
その姿が私には寂しく見えた。だから私も眠れぬ夜はジャムを煮る。
鍋は優しいが箆は厳しかった。間違った手順をやろうものならぺしっと手を叩かれる。
鍋と箆には口がない。説明もないままジャムを煮るのは苦労した。こんな事なら、生前母からちゃんと学んでおくんだった…
冷蔵庫から眠る材料を叩き起こす。今夜も一緒に眠れぬ夜を過ごしてもらおう。
そうしてジャム作りにやっと慣れ始めた頃、鍋と箆が私に別れを告げて来た。お盆に天国から戻って来た母に、鍋と箆はついていった。
今度は私が、新しい鍋と箆にジャム作りを教え込まなきゃな。
公開:23/08/28 20:25

幸運な野良猫

yahoo!サーバーに問題が発生したらしく2022年9月1日より2週間入れなかったので新規にアカウント取得。
半年以上毎日Yahoo!IDでログインを試みるも、現在進行形でログインできない状態です。#EY003って何だ?
運営に報告するも、ずっと無視されております。自動応答メールだけが返ってくる…1年経過で、もう諦めた…

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