背負う者

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大人になったばかりの私は幾度も責任に押し潰された。

そんな時は決まって山にある沼で心を和ませたものだ。

人は滅多に来ない。そりゃそうだこんな所に何の用があるのやら。

その分、気晴らしには持って来いの場所だ。それに、亀にとっても好都合だ。

此処の亀は人の害が無いからなのか極めて長寿だ。決して外来種ではなく、歴としたイシガメで寿命は20~30年だと聞くがそうは見えない。

私は亀に詳しい訳ではないが、明らかに他の亀とは違う特徴があった。

それは甲羅に付着した物で蓑を生やした蓑亀は勿論、花を付けた花亀、甲羅が鏡になった亀鏡、瓶をした瓶亀、浮島の島亀、蛇を巻き付けた亀蛇、等々……。

その中で一際大きく、長い髭を携え、甲羅には松の木を生やした亀仙人たる者がいるのだから、長いこと生きるとは色んなものを背負うということか。
ファンタジー
公開:23/08/20 20:00
更新:23/08/20 20:32

社 真秀

空想世界を広げる為書き連ねます。アドバイス、ご指摘いただけると幸いです。

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