こおりやま~

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夏休み、東北地方へ旅行に出かけた。
東京・上野駅から新幹線に乗車し、東北地方の玄関口である福島県の新白河駅を経て、次は郡山駅だ。
すると、急に車内が寒くなってきた。冷房が効き過ぎるというレベルをはるかに超えた、身体がぶるぶると震えて凍えそうな感じだ。
『こおりやま~』と、車内アナウンスが流れた。
車窓から氷に覆われた駅のホームが現れ、表示看板に『氷山』とある。ホームには、アザラシやらシロクマやらペンギンやらがいて賑わっていた。
毛皮をまとったエスキモーらしき人が車内にやって来て「氷河バー」という商品名のアイスキャンディーを売っている。珍しいので買い求めた。
氷河バーの売り子が「この駅のあたりは氷山の一角だ」と言った。
『こおりやま~』と、再び車内アナウンスが流れた。
次の瞬間、車窓からいつも見なれた駅のホームが現れ、表示看板に『郡山』とある。
ただ、手もとには氷河バーがそのまま残っていた。
その他
公開:23/08/19 07:00
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SHUZO( 東京 )

1975年奈良県生駒市生まれ。奈良市で育つ。同志社大学経済学部卒業、慶応義塾大学大学院政策・メディア研究科修了。
田丸雅智先生の作品に衝撃を受け、通勤中や休日などで創作活動に励む。
『ショートショートガーデン』で初めて自作「ネコカー」(2019年6月13日)を発表。
読んでくださった方の琴線に触れるような作品を紡ぎだすことが目標。
2022年3月26日に東京・駒場の日本近代文学館で行われた『ショートショート朗読ライブ』にて自作「寝溜め袋」「仕掛け絵本」「大輪の虹列車」が採用される。

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