壺中天

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「お、酒かい」
「はい、盃と金を渡してくりゃ飲み放題ですよ」
旅の宿、商人の兄ちゃんが酒を振舞っていた。
「こりゃ凄い綺麗な黄金色だ」
上手い。こんな上手い酒を味わったのは久しぶりだ。いいのかねこんな贅沢なことをして。
「つまみもないか」
「ありますよ、しばしお待ちを」
そう言うと兄ちゃんは酒壺をツンっと指で弾くと中から、田楽や湯豆腐、ゆでダコ、芋の煮物やら次々取り出した。これには俺も度肝を抜かれた。こりゃどういうからくりだ。
「兄ちゃんもっと酒くれよ」
ベロンベロンに酔った男が割り込んで来た。
「では、盃を」
「ああ?いいよちびちび飲むのも飽きた。ほらよこせ」
男は強引に酒壺を奪うと直接口を付けた。すると、男は吸われる様にして壺の中に飲み込まれてしまった。
「なっ⁉おっさんは?何処へ消えた」
「ああ、変な事する方が悪いんですよ。壺の中には別天地があるんでさ、もうあの人戻ってこれませんよ」
ファンタジー
公開:23/08/18 20:00

社 真秀

空想世界を広げる為書き連ねます。アドバイス、ご指摘いただけると幸いです。

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