ぐにゃり

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私は大手ハウスメーカー研究所の研究員だったが今はフリーの研究者。辞めた理由は、会社が私の発明を認めなかったからである。
私の発明というのはこうである。木や金属などさまざまな素材の上に特殊な薄膜を形成する。薄いけれどもこの膜は柔らかく弾力と温みがある。触れるとそれは人間の皮膚の感触。どんな硬い金属でもぐにゃりとした感触。例えばこの膜を形成した階段の手すりに触れるとまるで人の細い腕をつかむ気分。椅子に適用すると、堅い木製の座面でもぐにゃりと人の大腿部に座った気になる。
感触だけで人体を感じさせるのが特徴である。鉛筆やカップなどの小物にも応用できるしテーブルや浴槽にも適用できる。家のなかが皮膚の温みで満たされるとは何と画期的な発明であろうか。
商品化するため私は発明のただ一つの欠点を改良すべく日夜、研究に打ち込む。この膜は紫外線に弱く太陽光に当たると硬化してしまい爺さんの皮膚みたいになるのだ。
その他
公開:23/08/24 14:37

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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