石頭人間

或る所に堅物な男がいた。何事に対しても融通が利かず、考え方もかたくなであり、話のわからない石頭人間だと、人に揶揄されていた。
では実際に頭が石で出来ているかと言えば、そうではなく至って普通である。
ただ頭蓋骨のかたちや骨の構造自体は皆と同じだが，その構成密度とか緻密成分が大きく異なる様であった。
幼少時から母親が元気な子になれと、カルシウム分の多い牛乳・チーズ・海老・蟹・鰯・ししゃも等を沢山食べさせていた。
そのせいか凄い頑強な石頭に成長したとも言われる。
成人してサラリーマンになっていた時、朝寝坊で会社に遅刻しそうだと、朝食も摂らずに遅れまいと慌ててバス停に駆けつけた。
その時何かの拍子に石に躓き、地面にこっぴどく倒れ込み、頭をぶつけてしまった。
その勢いで何と歩道敷石の方は粉々に割れてしまったが、この男は何事も無かった様に起き上がり、バスには毅然と乗り込み遅刻は免れたのである。