欲望神

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私は妻と二人暮らし。妻も働いておりそれなりの生活を楽しむ。マンションの部屋には北欧家具。妻はブランドに目がない。私は車に金をかける。外食、旅行は大好き。コンサート、観劇は毎週。節約しないから貯金はない。
あるときドア脇の機械室でものを探した時だ。キョロキョロとした目で何か隅に座っている。声をかけると頭を下げて挨拶をする。外見はシャキッとした身なり。
「お世話になります」
「誰?」
「欲望の神です」
「?」
「私がいると住人の欲望が限りなく広がるそうです」
「それで金がたまらないんだ」
「そう。でもそろそろいい時期です」
というとそいつは携帯電話で誰かと喋っている。
「友人と交代します。では、失礼」と煙のように消えた。
それから、私たちはあまり出費しなくなった。というか私はリストラされ贅沢をするどころではなくなった。機械室を覗いてみた。前とは風態の違う貧相な奴がいた。
「誰?」
「貧乏神」
その他
公開:23/08/13 11:35
更新:23/08/13 11:50

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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