蛍の彼女

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「こんばんは。今夜も綺麗ですね」
彼女は蛍が集まる小川で僕を待っている。
他愛もない話をするだけの関係だが、まるで時間がゆっくりと進んでいるかの様でとても楽しく穏やかに過ごせた。帰り道は遠回りをして、また明日と約束をする日々。
僕は彼女を意識するようになった。気持ちを伝えたいが、嫌われることを恐れてしまう。
翌日も彼女は蛍を眺めながら僕を待っていてくれた。その姿は何処か儚げでつい見入ってしまう美しさがある。
挨拶を交わしいつものように話をする。色々話して沢山笑った。この時が僕にとって掛け替えのないもの。
星が沈み、夜明けが来た。僅かばかりの蛍火を見上げ、帰ろうと言いかけた時、彼女は泣き出した。
涙が頬を伝うに連れ彼女の体は薄く透け始める。
訳がわからなかったが別れなのだと察した。だから僕は彼女を抱きしめ伝えた。
「好きだよ」
「嬉しい、私もよ」
彼女は笑顔のまま蛍と共に消えてしまった。
ファンタジー
公開:23/08/12 20:00
更新:23/08/12 20:07

社 真秀

「自分の想う世界観を広げたい、形にしたい」という気持ちを抑えきれず投稿を始めました。
駆け出しですが、少しずつでも伝えられるよう努めますのでどうぞよろしくお願いします。
アドバイス、ご指摘いただけますと幸いです。


 

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