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「いらっしゃい。いつもありがとうね」

行き着きの駄菓子屋。情緒あふれるノスタルジックで錆びた外観が好印象だ。人足は少ないが30代の私にとっては色々とありがたい。

「えびせんに、プチプチラムネに、コインチョコに、それから水飴ね」
 
数ある駄菓子の中で気に入ったのは、この駄菓子屋のおばあちゃんお手製水飴。勿論ただの水飴ではない、懐かしい記憶味だ。
 
購入後、ベンチで水飴を堪能するのが私のルーティン。

一口舐めると頭の中で記憶が映像として流れ込んでくる。温くなった風、木漏れ日の温度、夏の音。今回は夏休みの思い出みたいだ。
 
一口、また一口と味わうごとに記憶はより鮮明になる。
少年少女が焼けたアスファルトを蹴って走り出す。一秒先もわからず本能のまま、もっと早く高く遠くを目指して風を切る。はじけ飛んだ汗を、泥だらけの手を、僕達を照らす夕陽を映す。

あの日の僕は何を描こうとしたんだろう。
ファンタジー
公開:23/08/11 20:00
更新:23/08/11 19:36

社 真秀

空想世界を広げる為書き連ねます。アドバイス、ご指摘いただけると幸いです。

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