夏蜜柑

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蝉の声がうるさい。外から鳴き声が聞こえてくる。外に出なくても分かる。太陽が照り付けて肌が焼けるような猛暑だ。倒れてしまいそうな程の熱が、体全体に襲い掛かる。
こたつに入る。彼女は、額に汗を掻きながら蜜柑を食べる。そんな彼女の姿を見た浩紀は、至極真っ当な質問を投げかける。

「なんでこの暑い中、こたつに入って蜜柑を食べてるんだ?」
「だって夏蜜柑を食べるってそういうことでしょ?」

彼女は当たり前のように答える。ついに暑さのせいで頭がおかしくなってしまったのだろうか。そんな考えがほんの一瞬だけ頭を過ったが、いや違う。これは彼女の通常運転。こういう子なのである。

結婚して初めて一緒に迎えた夏。そんな彼女の一面を見た浩紀は、夏蜜柑の花言葉を辞書で調べた。

夏蜜柑の花言葉は「花嫁の歓び」

こうやって浩紀をからかって戸惑わせて、その反応を楽しむ事こそが彼女の、浩紀の花嫁の歓びなのである。
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公開:23/08/11 00:22

富本アキユ( 日本 )

カクヨムにも小説を投稿してます。
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・作詞を担当
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・葉月のりこ様YouTubeチャンネル『ショートショート朗読ボックス』~ショートショートガーデンより~の動画内で江頭楓様より『睡眠旅人』を朗読して頂きました。

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