電話

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「どうだ、元気にやってるか?」
「あぁ。父さんも、全然、変わりないね」
「あたり前だ。お前は、少し痩せたか?」
「さすがだね。ちょっと、バテ気味」
 18の時に大学で実家を出て、もう、今の土地にいる方が圧倒的に長くなった。
 しかし、コンピュータネットワークの進展で、とても手軽に、テレビ電話が使えるようになった。なので、実家に帰らなくても、モニタ越しにいつでも父親と会話するコトができる。前回、実家に帰ったのは、3年前だ。
「子ども達はどうだ?」
「みんな元気。娘はずーっと絵を描いてる」
「ははは。お前と一緒だな」
 ネットワークの次は、AIの進展だった。今は、ある程度そのヒトのデータや声を事前にインストールしておけば、ほぼ、本人と変わらない会話が再現できるようになった。
「じゃぁ、またな」
「うん、元気で」
 ボクは、モニタのスイッチを切った。
 3年前に実家に帰ったのは、父の葬儀だった。
SF
公開:23/08/16 07:01

shimany( 京都 )

ライブラリアン/アーティスト/クリエータ

わが子達に刺激されて始めます。
もう少し長いショートショートは、こちらです。

https://note.com/shimany/m/m5c907af8f7c5

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