バルコニーのバル子

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朝、部屋のカーテンを開けると、窓の外に一匹の黒猫がいた。
……ん? 俺はまだねぼけているのか?
まぶたをこすってもう一度窓の外を見る。
やっぱり猫だ。
……こいつ、どこから来たんだ?
ここ、マンションの六階だぞ?

黒猫はバルコニーから俺のことをじっと見ている。金色の目が太陽の光でキラキラと輝いている。
俺は窓を開けてバルコニーに出る。通り抜けたり、壁を上ったりできそうなところは一つもない。
隣人のペットでも、野良猫でもなさそうだ。
黒猫はとまどう俺を見て、ゆっくりとしゃべり始めた。
『おどろかせてすまない。わたしは、名前をつけてもらいにきた』
見た目からは想像できない、透き通るようなきれいな女性の声だった。
「うーん、そうだな。……バルコニーにいたから、“バル子”はどうだ?」
『バル子……、分かった。ありがとう』
バル子はさっとバルコニーの壁を乗り越え、どこかへ消えていった。
SF
公開:23/08/14 07:29

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