落としもの

病院の廊下で飴玉を拾った。２つ３つ、点々と落ちているそれを拾っていく。
まるでヘンゼルとグレーテルだ。拾い続けると兄妹は困らないだろうか？と、想像する。
飴玉を追って外に出ると穴の開いたお菓子袋を持った男の子を見つけた。
聞けば彼、入院中の妹の為にお菓子を差し入れしているのだとか…
私は彼にハンカチを渡した。このハンカチは結び方一つで風呂敷へと変わる。
袋一杯のお菓子に比べれば、小さなハンカチに包まれるくらいのお菓子は可愛いものだ。それくらいなら医者の私も許容しよう。
彼はハンカチのお礼に入りきらなかった飴玉とチョコを１つずつくれた。
飴玉を口の中で転がし、なくなったところで私も医務室に戻る。
…私の席が水浸しになっていた。先程、天井を走る水道管が破裂したらしい。
幸い、ノートパソコン等は手元にあるし、最悪の事態は免れた。
私はお菓子をくれた彼に心の中で感謝するとパラソルチョコを口にした。