捨て猫の傘

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日差しが眩しい、もう夏が来た。夏だからといって別にどうということもない。今日も傘の下で寛ぐだけ。
私は捨てられた。まだ飼い猫だった頃に遊んでいたこの傘を差した後、主人は脇目も振らず帰って行った。私はどうやら置いていかれた傘の様に晴れたらもう要らないみたいだ。

騒がしい。目を開けると悪ガキ共が少年をからかいながら歩いていた。
「やーいぼっちの雨男!お前がプールに来たせいで中止になったんだからな」
本当に間抜けだ。人間なんて所詮こんなものだろう。
少年はしゃがみ込んで泣き出してしまった。
「やべ、こいつが泣くと雨が降るぞ」
と悪ガキは逃げて行った。
突然雨が降り出した。小年は濡れながら何度も涙を拭って必死に堪えていた。そんな光景を見ていられず気づいた時には体が動いてそっと傘を差し出していた。
「貸してくれるの?ありがとう」
人の心はよく分からない。でも一人は悲しいことそれだけは知っているよ。
ファンタジー
公開:23/08/07 20:00
更新:23/08/07 20:04

社 真秀

空想世界を広げる為書き連ねます。アドバイス、ご指摘いただけると幸いです。

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