彼女は夕顔

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 朝顔は朝に咲く。昼顔はもちろん昼に。
 そして夕顔は、夕から夜にかけて咲き、翌日にしおれる。
 
 だったら私は夕顔だ、と女は思う。
 女の仕事は夕方過ぎから始まり、次の日の朝まで。
 彼女がいるここは、繁華街。既に日は落ち、辺りには仕事帰りらしい、スーツ姿の男女がたくさんいる。
 だが女は、同性である女性には目もくれない。彼女が探すのは男性だけ。
 そう。自分を花としてみてくれる、男だけだ。

 ある男と目が合った。
 にこりと、媚びたような笑顔を振りまいてやると、男はにやつきながら、女に近づいてきた。
 
 今日の獲物はこの男だ。女は決め、男の腕に抱きついた。
 二人で、彼女の仕事場であるラブホテルに向かう。
 そこで女は、咲いて見せるだろう。男の腕の中で。
 何しろ彼女は、夜の間に咲き誇る、夕顔なのだから。
その他
公開:23/08/09 21:00
退廃

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