沈黙交易都市

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それはある地方都市で始まった現象である。広場に誰かが食べ物や衣服を置いた。新鮮な野菜、米、新品のジャージ、靴など。欲しい人が持ち帰った。するとまた食品、衣類、雑貨、家具が置かれる。ついには家電、自動車まで置かれた。自由に品物を持ち帰る人、持ち寄る人の輪が広がって、市民生活は広場のもので十分まかなえるようになった。
同時に市では貨幣の流通が目に見えて減ってきた。ただの紙切れの紙幣に市民は飽きてしまい、金の心配をする生活より広場にゆけば満たされる生活に慣れたのだ。
そのうち広場に住居を提供するチラシが貼られて希望者が訪ねてゆくと空き家に住むことができた。また広場でのんびり待っている人がいて、できる仕事があれば連れて帰り仕事をしてもらう。もちろん無償で。
この都市の情報は世界中に広まり、沈黙交易都市として世界遺産となった。沈黙交易とは互いにコニュニケーションせずに交易を行う古い交易手法である。
その他
公開:23/08/10 15:53

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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