4
3

夜空の海を漂う大きな雲の島が、時折月の前を横切ってはぼんやりと光を放つ。
温い夜風を感じながら、縁側でその光景を眺めていると、一筋の光がまっすぐに地上から空へと駆けあがっていき、辺り一帯を震わせる程の大きな音と共に二つの雲の間で弾け、花火の橋を架けた。

「おや、打ち上げつり橋。もう、そんな時期なんだねぇ。」

お盆にスイカをのせて、ひょこりとお婆ちゃんが顔を出す。

「打ち上げつり橋?」

「そう!話した事なかったけど、なっちゃんのお爺ちゃんは腕のいい打ち上げつり橋職人だったのよ。毎年、夏の夜空に雲の島が集まって夜空の住人達が交流会をするんだけど、雲が上手く流れないと島の行き来ができない。そんな時、打ち上げつり橋職人が花火の吊り橋を架けてあげるの。」

夜空を見上げる。
遠くてよく見えないけれど、まるで誰かが通行しているように、花火の吊り橋は雲と雲との間でゆらりゆらりと揺れていた。
ファンタジー
公開:23/08/04 22:09

ネモフィラ(花笑みの旅人)( 気の向くまま )

読んでくれてありがとう!

寒い季節になったから、気が向いた時にふらりと立ち寄ってゆるーく投稿しています。

 

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容