落としもの

仕事を終え、帰宅する。
鍵を取り出そうとポケットを探ると小さな穴が開いていた。それは丁度、部屋の鍵くらいの大きさで、つまり落としたという事だ。
すぐにマネージャーに連絡する。
ここ最近は連続で仕事が入っており、どこの現場で落としたか見当がつかない。
普段の悪そうなイメージからは想像できないだろうが素の私は腰が低い。
必死にお願いするまでもなくマネージャーは動いてくれた。
『鍵失くしたって？大丈夫？ウチ泊まる？』
カニさんからライン。そうしてもらおうかな…
『犬が今、探しに出た』
桃太郎さん、ありがとう。
『ランプの魔神に頼もうか？』
アラジンさん。それはやり過ぎです。
『天竺にはありませんでした』
三蔵法師さん。そこはまだ着いていません。
気分を落ち着けようと煙草を取り出す。ポロっと部屋の鍵が出て来た。
急ぎ、鍵が見つかったと報告する。
『まさに猿も木から落ちる、だな』と皆にツッコまれた。