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帰り道、縁日でもないのに祭囃子が聞こえてきた。
音の方へ足を運んでいると廃神社の境内に櫓とその周囲に人盛りがみえた。盆踊りだろうか。浴衣の人や普段着の人、子供から大人までいる。なんて愉しげなんだろう。様子を見ていると音頭を取っていた女性が近づいてきた。

「さあ、入りなさい。これは其方のための宴なのだ」
 
腕を引かれ盆踊りの列へ吸い込まれてしまった。まずいことになった。
 
「列から出られない」

手足が歌に合わせて勝手に動き、ゆっくりと櫓の周りを踊り歩く。一周するごとに物を考える力を失い、自分にできることは帰りたいと願うことだけ。
恐怖に駆られていると歌が終わった。体の自由が利く。
 
「今しかない」

地面を蹴ろうとした瞬間、器が割れる様な感覚を覚えると、体からもう一人の自分が抜け出し走り去った。

「僕が二人いる」

再び音楽が流れ始めた。
 
「さあ、次は其方が音頭を取りなさい」
ファンタジー
公開:23/08/03 20:00

社 真秀

空想世界を広げる為書き連ねます。アドバイス、ご指摘いただけると幸いです。

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