落としもの

「山でキノコ狩りをする際はな、網の目の大きな籠を使う事がマナーじゃ。どうしてか分かるか？キノコはな、胞子を落とすじゃろ？この大きな網の目から胞子を落とさせ、山に新しいキノコを生やさせる為じゃ。それに網の目より小さなキノコは採るに早すぎる。採るなら網の目より大きなものを採るんじゃ」

祖父は私の前を歩きながら、山に生えるキノコについて教えてくれる。
今、祖父の籠の中には立派なマツタケが入っているのが見える。あの迫力…確かに小さいものではこうはいかないだろう。
それにそのマツタケから胞子がパラパラと落ちているのが見える。
祖父の教えは、山の恵みを人が享受する為の掟でもあった。
これを破るとキノコは山から消える。消えたが最後、キノコもう戻ってこないらしい。
それにキノコの落としものは、数年経てばキノコの道を作ってくれる。
その道の管理が、祖父の仕事だという。
まさに目から鱗が落ちる仕事内容だ。