【超短編小説】男と女
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ぼくの頭のてっぺんにはコインを入れる穴が開いている。小学校に上がるまで、それがふつうだと思っていた。ある時母に訊いた。「どうしてぼくの頭には穴が開いてるの?」「あなたの本当のお父さんが貯金箱だからよ」「そうだったんだ。本当のお父さんは今どこにいるの?」「もうこの世にはいないわ。貯まったから割られたの」「誰に?」「私に」「へえ」「貯まったお金で、今のお父さんと結婚したのよ」「男と女ってそんなものかね」「そんなものよ」頭の穴からふしゅっと空気が漏れた。
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公開:23/07/27 18:37
短い読み物を書いています。その他の短編→ https://tomokotomariko.hatenablog.com/
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