AI親方

近い将来、人間の仕事の約半数がAIに奪われると言われている。儂はそれに希望を見出した。
儂は大工だ。才能なんてものはてんでなかったが、経験と努力で親方と呼ばれるまでになった。
儂は不器用だ。先代のように上手く教えられないし、体に染みついた技術を上手く説明できない。そんな自分にイライラし、つい乱暴な口調になってしまう。これでは弟子が育たないのも当然だ…
だから儂はAIに業を継がせた。儂の動きを分析し、データ化させる。
思った通り、儂が教えるよりAIが教えたほうがよっぽど分かりやすい。
AIは優秀だ。だが儂以上に感覚というものをどうにも掴めないでいる。AIだからか、曖昧な事が苦手なようだ。
それでもAIは儂の業を全て憶え切った。儂の技術が、これで次の世代へと継承できる。
その技術が流出してしまう事に恐れはある。だからこそ、プログラミングの才能のある息子には親方ではなく、AIの管理を任せたんだ。