月の紳士(ル・リュンヌ)

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パリで絵本の出版社に勤めるジャン君。ある夜、仕事を終えて家路を急いでいた。

空には丸い月が出て、街角を照らしている。
すると、急にあたりに霧がたちこめてきた。そしてむこうから一人の紳士が歩いてきた。

トレンチコートにシルクハットをかぶったその人は、ジャン君の前で止まって言った。
「今晩は。私は月です」
「え、月(ラ・リュンヌ)?」

思わず聞き返したジャン君に、紳士は言う。「ノンノン、貴方も月は“女性”だと思っていますね。“ラ”のつく単語は、女性名詞。でも、私は男のつもりなのですぞ」

ユーモラスな言い方に、彼は思わず笑ってしまった。
そう、フランス語で月は女性あつかいなのだ。でもそれは人の勝手な思い込みだ。
ジャン君がうなずくと、紳士はうやうやしくお辞儀をして、立ち去ってしまった。

その夜から、ジャン君は夜空の月を見ると、心の中でその月に、シルクハットをかぶせて見るようになった。
ファンタジー
公開:23/07/30 20:29
更新:23/07/30 20:33

tamaonion( 千葉 )

雑貨関連の仕事をしています。こだわりの生活雑貨、インテリア小物やおもしろステーショナリー、和めるガラクタなどが好きです。

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