猫造人間

昔々、猫が高い知能を有していた時代の話である。
猫は自らに都合のいい人間を造り出した。猫の為に働き、猫に尽くし、人生の全てを猫に捧げる人間を造った。
猫造人間と呼ばれるそれは人間と見た目が全く同じだった。人間と同程度の知能を有し、人間との交配も可能である。
だがその場合、生まれるのは猫造人間。猫はひっそりと猫造人間を増殖させた。
猫造人間によって猫の生活は豊かになった。
猫が動かなくても、猫造人間が動いてくれる。１日中寝ていても咎められない。
猫は堕落を極めた。全てを人間に丸投げし、だらだらと過ごし…今では言葉も喋れなくなった。
猫は高い知能を有していた時代を憶えていない。だがそれは何も猫に限った事ではない。
高い知能を有していた犬もまた、犬にとって都合のいい人間を作り出すと堕落を極めた。
そうして残った猫造人間と犬造人間。
犬派猫派と呼ばれるそれは今なお潜在意識下で戦いを繰り広げている。