落としもの

私の住む村には妖怪の道と呼ばれる農道がある。
元々使い勝手が悪い上に、その不気味さからあまりここを利用する人はいない。
だが、この農道の管理者であるウチは別だ。道を整え、落としものがないか毎日確認する。
この”落としもの”というのが非常に厄介でね。一見ゴミに見えるようなものでも、妖怪の私物である可能性がある。
そうなれば毎夜、妖怪が落としものを探しに村を練り歩き始める。
もし、妖怪の私物を自分のものにでもしてみろ。怒った妖怪に神隠しに遭わされてしまうぞ…
だから落としものは必ず、農道脇にあるお堂へと納めておく。
そうすると翌日にはそれが必ず回収されている。
何とも不思議な話だが、本当の事である。
ちなみに今日は一家総出で朝から妖怪の道の落としもの拾いをしている。
どうやら昨夜は百鬼夜行が行われていたらしく、人間のお祭り同様、それが終わった後はゴミか私物か分からないものでお堂は溢れかえった。