責任重計

仕事から帰って来ると妻が体重計のようなものを僕に差し出してきた。
「最新の責任重計、買っちゃった」
最新のものである必要あるの？
「あるわよ。最新のものだと、責任の重さを正しく計ってくれるの。例えば隣の田中さん。あの人、『新規プロジェクト任されるなんて責任重大だ～』なんて言っていたけど、あの人の責任、凄く軽かったの」
あの人、いつも口だけだもんね。
「『母の責任！』とか言ってウチによく来るお義母さん。あなたが私を蔑ろにしていないか責任をもって見てくれていたわ」
どおりで母さん、僕の家での様子をよく知っているわけだ…
と、そんな話の間に僕も責任重計に乗せられた。
「…やっぱり…あなた、責任を重く感じ過ぎよ。もう少し肩の力を抜いて仲間を頼りましょ？ほら。明日これ持って行って、仲間の責任の重さ計りなさい。きっとあなたが思っているより皆、頼りになるわ」
妻の励ましに責任重計のメモリが、少し減った。