客体

　ボクらは、脳の中に棲んでいる。
　ボクらは、普段、世界をありのままに捉えていると思っているが、実際は、五感から入力した情報を、自分の脳で再構築したイメージを世界だと認識している。つまり、見たいモノを見たいように。そういう意味で、ボクらは、脳の中に棲んでいるのだ。
　さて、それぞれがそれぞれの構築した脳の世界の中に棲んでいる時、その中で出会う人間同士は、お互い、どういう存在になるだろう？
　自分の脳の中、つまり、自分のコントロール下にある場の中で、「他者」だけが思いどおりに振舞わない。唯一、自分の思いどおりにならない他者のせいで、静寂なはずの世界は、途端に破綻をきたすのだ。当然、そのストレスは、実に、耐えられない程大きくなる。
　そして、元のとおり、全てを自らのコントロール下に置き、世界の制御を取り戻すためには、意のままにならないモノを排除するしかない。
　そう、排除するしかないのだ。