落としもの

夏休みの宿題。絵を描く事が苦手な私は、父に手伝いってほしいと頼んだ。
父は快く受け入れてくれて、今度の休みに一緒に描こうって約束してくれた。
だけど、その約束は破られた…父は入院してしまった。仕事中倒れて、病院に運ばれた。
だから私は一人で絵を描く。
画用紙に描く夜空。そこにぽたりぽたりと涙を落としては絵の具が滲み、画用紙の白で出来た星が現れる。
その中、一際大きな星に私はお願いした。
「どうか父が無事、家に帰ってきますように」
泣き疲れた私は、そのまま倒れるよう寝入ってしまった。

「…おーい。起きろ～。絵、今日中に完成させるんだろ？」
父が私の肩を揺さぶっている。えっ？父！？
ガバっと起き上がった私はこれが夢じゃないか確認する。
「ごめんな、心配かけて。貧血と検査入院だから大丈夫だよ」
父の言葉にホッとした。
描きかけの絵に目を向ける。ひときわ大きく白く滲んで輝いていた星が消えていた。