虹の洗濯

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予報外れの夕立に降られ、ベランダの洗濯物をあわてて取り込んでいる最中、物干しざおの下に虹のきざはしが落ちているのを見付けた。
急な雨で空も取り込みに失敗したのだろう。泥んこに汚れたタオルサイズの虹をつまみ上げ、このまま返したものか迷う。
早く戻さないと虹のアーチが短くなってしまうし、さりとて端っこだけ汚れた虹も気の毒だ。急いで洗濯機に放り込み、洗剤を入れてスイッチオン。七色のシャボンを立てながら洗濯する。

すすぎと脱水が終わった虹は、泥汚れも七色もきれいに落ち、雪の様に真っ白になっていた。
道理ですすぎの水がカラフルだと思った。干して乾かせば元に戻るだろうか……?

恐る恐る乾燥機にかける。ふわふわにふくらんだ虹は真っ白なままだった。
苦肉の策でかき氷シロップをぶちまけ、無理やり染めた虹を空へ返す。

そうして端っこだけ色の違う虹が空にかかった日、降り注ぐ雨はほんのり甘かったという事だ。
公開:23/07/24 17:11
月の音色 月の文学館 テーマ:落としもの

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
小石 創樹(こいわ もとき)名にて、AmazonでKindle書籍を出版中。ご興味をお持ちの方、よろしければ覗いてやって下さい。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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