落とし物検定

近年、社会情勢や価値観の変化に伴い、道で落とし物を見付けても、交番等へ届け出ない人間が増えた。
モラルの低下を懸念した政府と警察庁は、マナー啓発と環境美化を図るべく、『落とし物検定』を設けて拾い主のルールや権利を明文化し、落とし物との正しい付き合い方を世に浸透させた。

検定に合格した落とし物マイスターの活躍で、路上は少し綺麗になり、ありがとうの声は地道に増えた。人気にあやかって『探し物検定』『尋ね物検定』『届け物検定』『お使い物検定』などが誕生。道行く人のちょっとした困り事が解決しやすくなった。

通りすがりの助け合いとお互い様の精神が広く根づき、やがて物検定ブームは自然と下火になっていった。
そんな中、今なお根強い人気を誇る数少ない例外が『掘り出し物検定』だ。
価値ある品を的確に見抜き、いち早くゲットする。バーゲンセールや特売に必須の技能として、取得を目指すハンターが絶えないのである。