よるの衣

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「おはよう」
「おはよう。珍しいな」
そう、試験期間中、私はだいたい不機嫌である。学年トップの座を守るべく、遅くまで勉強をして不機嫌になる事を弟は承知の上なのだ。
だから朝から朗らかな私が珍しかったのだろう。
今日は得意の古典で、そのうえ夢に「少しいいな」と密かに思っていたクラスの男子が出てきたので、正直機嫌がいい。
「恋は呪いだ」と言ったのは誰であったか「少しいいな」だった彼は、夢に出て来た事で完全に「好き」に格上げされてしまった。いや、もともと好きだったのかも?
――ああ。いけない。試験中だ。昨夜は和歌を覚えたのだ。私は一首一首反芻する。ええと。

「姉ちゃん」
「なに?」
「パジャマ裏表逆に着ているよ」

――いとせめてこひしき時は むは玉のよるの衣をかえしてそきる。(恋しくてならない時は、夢がみられるという言い伝えの通り着物を裏返して着るのです)


ああ、やはり。恋は呪いだ。
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公開:23/07/24 04:24

椿あやか( 猫町。 )

【椿あやか】(旧PN:AYAKA) 
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◆第18回坊っちゃん文学賞大賞受賞
◆お問合せなど御座いましたらTwitterのDM、メールまでお願い申し上げます。

◆【他サイト】
【note】400字以上の作品や日常報告など
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