熟成父さん

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「ぱぱ、熟成するわ」
夕飯のとき、無口な父親が口を開いた。
何を言っているかわからず、妹と目を見合わせた。
「なにを熟成するのよ」
「自分を」
「なんのために・・・」
「熟成するといい味が出るってテレビで言ってたんだ」

それは肉とかの話だ。
僕と妹は相手にしなかったが、次の日から父は家に帰ってこなかった。
父の書斎をみると封筒があり、『熟成工房 〜味のあるイケおじに〜』
中の資料には、カプセルのような容器に人間が入っている。
特殊な菌や、温度など、徹底的に管理されたカプセルに1週間入ると熟成されるらしい。

1週間後、父が帰ってきた。
「ただいま」
再び妹と目を見合わせた。
なんと渋い、良い声か。
白髪が増えているがそれもダンディーで、ベテラン俳優のようだ。
肌の色も適度に黒くなり健康的だ。

ただ、肌から汗が垂れている。うまそうな肉の匂いが立ち込めている。
良い匂いなのに、なんか嫌だ。
ファンタジー
公開:23/07/14 20:24

空飛びペンギン( 関東 )

ご覧いただきありがとうございます。

俳優業の傍ら、趣味でショートショートを製作しています。
田丸先生の書籍を読んでから、楽しく作っております。
ご意見、ご感想いただけると嬉しいです。


名作文学の朗読Youtubeを行っています。
http://www.youtube.com/@akky_roudoku

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