ささやく

かぐや姫を迎えに地球へと来た我々は、姫を確保するとすぐさま月へと帰った…私だけを地球に残して。
私が地球に残ったのには意味がある。その理由の一つが今、私の手の中にある月の秘宝・不老不死の薬である。
姫は地球で好いた男にこれを渡した。男がまだ薬を飲む前で本当に良かった。
私は男にそっと近寄ると「それは飲んではいけない」と、何度も囁く。
私の声はとても不気味でね。男は気味の悪さに薬を手放し、山頂に捨てられたそれを私は回収した。
私が回収すべきは他にもある。姫はこの星で月の失われた宝を求めたそうだ。
それを求婚相手に持ってくるよう命令したとか…ここは地球。ありえないと思いつつも念の為、探しに旅に出た。
するとどうだ。月の宝が見つかったではないか！
それらを急ぎ回収する。同時に、宝に人が寄り付かないよう不気味な声で忠告を続けた。
そうして過ごした幾星霜…いつしか私は地球で鵺と囁かれるようになった。