優しい涙

私の妹は、何かと擬人化をする。

町でゴミ袋を集めるゴミ収集車を見れば
「あのくるまさん、ゴミをたべるのがすきなんだねえ」とニコニコ。
寝る時間になって布団に潜り込めば
「いまねえ、ふとんさんにギュってだきしてめてもらってるんだよ」とはにかむ。

今年もまた暑い夏が来た。
妹は変わらず楽しそうに擬人化をして笑っている。風鈴の音を綺麗な声だねと言ったり、干してある洗濯物を見て気持ちよさそうだねと言ったり。

夜になって、妹と二人で線香花火をやった。色んな光がパチパチとたくさん弾けて、やがて光の激しさが落ち着いて、ポトッと火が落ちて線香花火は終わった。

そうしたら、妹は泣き出した。
「はなびさん、しんじゃった？」
どんなものにも命を見出す妹の優しい涙が、さっき落ちた線香花火の火と同じようにポタポタと落ちていた。