飛べないけれど

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「そこの君」
塾の帰り際、アムンゼン先生に呼び止められた。

この塾はコウテイペンギン界では有名だ。難関大学に何人も合格者を出している。僕は成績も中くらいで、目立たない存在だった。

先生はうちの塾で評判の名講師。少人数制のクラスで、なかなか入れないという。

アムンゼン先生はゆっくりと話し始めた。
「志望校は、地元のロンネ大学か。君の実力なら合格するだろう」

先生は続ける。
「もっと広い世界に羽ばたいてみないか」
いや、飛べませんって。僕たちペンギンですから。

「ウェッデル大学を受けてみないか」
南極中のエリート達が集結する大学だ。そんな冒険をするなら、地元でのんびりしていたい。

先生は僕の心を見透かしたようだった。
「地元を見ただけで、世界を見た気になるな」

この一言にグサッときた。

僕は今、アムンゼン先生のクラスで学んでいる。
狭い世界しか見てなかったと、後悔しないために。
青春
公開:23/07/11 21:58
更新:23/07/11 22:02
#研究室ライブ #プレッシャーをかけるペンギン

ろっさ( 大阪府 )

短い物書き。
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