ひとの記憶に残る死に方

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 とある男が自殺しようとまで思い詰め、ついに遂行することにした。この男、承認欲求が強く、死んだ後も記憶に残る死に方をしようと考えている。

 だとしたら、飛び降り自殺は却下だ。あまりにもありふれていて知人の記憶にも残りそうもない。
 入水自殺はどうか。海まで流れてしまうとそのまま行方不明になり、人の記憶に残るどころではない。
 一番手堅いものは駅から走行中の列車に飛び込むことだが、これは遺して行く家族を思うと忍びない。
 そこで、男は今まで誰もしたことがない死に方を模索することにした。

 つけっぱなしのテレビから『今日は何の日』と、耳慣れたフレーズが聞こえる。どうやら今日は豆腐の日らしい。
 そうだ。豆腐の角に頭をぶつけて死ぬのはどうか。これで死んだ人間はいないのだし、この方法で死ねば間違いなく人々の記憶に残る。

 そして男は地面に置いた豆腐を目掛け、マンションの屋上から飛び降りた。
ミステリー・推理
公開:23/07/17 09:42

ののの糸糸

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