バナナ注意報

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早春の夕方。郊外の住宅街を歩いていた。舗装された道の両側は同じような家が建ち並び、初めて訪れる友人宅に向かうはずが、いつのまにか迷ってしまった。まだ日は暮れないが、人の気配がしなくて道は静かだ。平日の午後、首都圏のベッドタウンとはこんな感じか。
パラパラと落ちてきたものがある。足もとを見るとバナナの皮だ。次々と落ちてくる。皮を踏んでつるっと転んでしまった。バナナの皮で転ぶって本当だと感心しているとごつんと頭に当たった。バナナだ。痛っ!皮に続いてバナナの実がごろんごろんと降ってきた。なかには房で落ちてくるのものもある。これはかなわんとバナナを避けながら小走りに走っていると、一軒の家から〇〇さ〜んと声がする。家の前で友人の奥さんが傘をさして私を呼んでいる。挨拶もそこそこに家に入れてもらう。
「大変だったでしょう。みんな家に閉じこもっているんですよ。午後から注意報が出ていたものですから」
その他
公開:24/03/01 07:55

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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