返礼品の男

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 よお。戻ってきたぜ。信じられねぇって顔してるな。
 六年半前、「返礼品申請受理」の通知をもって納税課が来たときはたまげたぜ。
 なんにもねえこの町で「ふるさと納税」の返礼品になりそうなのは町民ぐらいだってのはまあ、わかるけどよ。まさか親が子を売るなんてな。
 どうせ売れ残るから廃棄処分しちまおうってハラだったんだろうけどな。捨てる神あれば拾う神ありってね。
 返礼品の俺には人権がないからって運送会社が応募してくれたのさ。残業し放題の自動配達装置って名目で、さんざんこきつかわれたぜ。
 この辺の配達担当だったよ。宅配ボックスが増えたから気づかなかっただろ?
 そんな中、隣町のさる奥方と配達途中でネンゴロになってさ。社長にメルカリに出してもらって奥方に買ってもらったんだ。
 で、失踪人宣告ギリギリで戻ってこられたってワケ。
 なぜ?
 わかりきったこと聞くなよ。返礼品だけに、お礼参りだよ。
その他
公開:24/03/02 15:28
シリーズ「の男」

新出既出

星新一さんのようにかっちりと書く素養に乏しく、
川端康成さんの「掌の小説」のように書ければと思うので、
ショートショートとはズレているのかもしれないです。
オチ、どんでん返し、胸のすく結末。はありません。
400文字、おつきあいいただければ幸いです。

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