ホームにて

電車を待って駅のホームに立つ。大きな広告パネルに向き合う。パネルのほとんどを女性の顔が占める。圧倒される大きな顔。タレントだけど誰だったか。誰でもいいが、きれいな眉に長くて濃いまつ毛。大きな目。瞳に白い輪が浮く。撮影時の照明に違いない。不自然な輪。電車がすごいスピードで目の前を過ぎる。特急か。ここには止まらない。女性の顔をまた見る。きれいな形の鼻。毛穴の一つもなくて滑らか。真っ赤な唇から白い歯をみせて笑う。整った歯並びが白タイルのようだ。また電車が過ぎる。快速急行。女性の顔に戻る。口元から顎にかけてすんなりと決まっている。さすがタレントかモデルだ。骨格が小さく月並みじゃない。首にペンダント。細い鎖に金属の飾り。アルファベット。YSか。YSって俺じゃないか。何だか嬉しい。女性と俺との共通点が見つかった。電車が止まってドアが開く。乗らない。電車をやり過ごす。何かの縁。大きな顔を見ていよう。