はじける

私が世界中を旅していた頃、砂漠でキャラバンに同行させてもらった事がある。
彼らの移動は常に命懸けだ。先人の知恵を元に身の安全を確保しつつ、先に進む。
ある日の事だ。風が穏やかで移動に適していると素人考え丸出しの私に、団長は来た道を引き返すと言い出した。
「今日は龍が目を覚ます」
砂漠に龍？危険な生物でもいたのだろうか？
詳しく聞きたいが慌ただしく準備が進む。とてもそんな雰囲気ではなかった。

最寄りの町まで引き返したところで団長が遠くの空を指さす。
視線を向けると、砂漠の一角が大きく弾けた。
驚くのはそれだけではない。弾けたそこから、細く長い砂嵐が龍の如く空へと昇りながら移動を始める。
もしも先に進んでいたなら私達はあの竜巻に丸のみにされていた。砂漠の龍の意味と、その恐ろしさを理解した。
そして町に戻ってきたからには当然、その日はキャラバンの皆と酒場ではじける。砂嵐より騒がしい夜となった。