俺がヒモだったとき

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俺はヒモだった。彼女は外資証券会社に勤務。高給で個人成績次第でボーナスが出る。住居は都心を見下ろすタワマンの高層階。ヒモの俺はギャンブルや外出に興味がなくマンションのジムで体を鍛えてぶらぶらするだけ。
彼女は超多忙。早朝出社に深夜帰宅。バソコンに向かう仕事漬けだった。遅く帰っては上等な食事をネットで取り寄せ、夜景を見ながら俺と会話する。たまの休みに俺は彼女が誂えたパリッとしたスーツを着て、高級レストランとかに二人で出かける。
そんな生活が一変した。会社が傾いて彼女の収入は激減。これではやっていけないとマンションを売り払い、郊外アパートに引っ越す。会社も辞めて地域の図書館司書に。
狭い部屋に二人きり。俺も働こうかと言うと、彼女は必要はない、図書館勤務でやっていけると言う。
「実は本が好きなの」「それで?」「本に紐がついているでしょ」「栞みたいな」「そんな感じでいてね」
俺はずっとヒモである。
その他
公開:24/02/24 15:03

たちばな( 東京 )

2020年2月24日から参加しています。
タイトル画像では自作のペインティング、ドローイング、コラージュなどをみていただいています。
よろしくお願いします。

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