はじける

私と妻は幼馴染だった。一緒にいる時間が長すぎて、この気持ちが恋だと気づくのに時間がかかった。
玄冬。まさに何も知らぬ幼子だった。
恋心を知り、妻に告白した青春時代。
まるで桜のつぼみが綻ぶようにピンクに染まるその顔は今でもしっかり覚えている。
卒業とともに結婚し、妻と生まれてくる子どもの為にと汗水たらした朱夏。
その暑さにやられたのか、何の為の仕事かを見失う事もあった。
そんな私にぴしゃりと冷や水を浴びせ、冷静さを取り戻してくれた妻。感謝の念は尽きない。
その時の苦労が祟り、白秋の今は病院のベッドで余生を過ごす。
面会が可能な時間は妻が傍にいてくれる。妻が帰宅すると、私はスマホの画面を見つめる。
私は妻の為にスマホの操作方法を覚え、リアルタイムで通信する術を学んだ。
最新機器に関してはまだまだ玄冬。だがこれを使いこなし、妻と再び青春を送る。
はじける妻への愛が私をまだまだ若くしてくれる。