いたいのいたいのとんでいけ

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怪我をした時、母がいつも言ってくれたおまじない。
それが、僕は大好きだった。
消毒液は沁みるし、お風呂に入る時も痛いけど、母がそのおまじないをしてくれると不思議と痛くなくなった。
「お母さん凄いね」というと、「そうでしょそうでしょ」と子供みたいに笑っていた。
だから、僕もいつかお母さんみたいにおまじないが使えるようになりたいと思ったんだ。



「それが、僕がお医者さんになった理由だよ」
「そんなおまじない効果あるの?」
診察を終えた小学六年生の通院している子供が訝しげな顔で尋ねる。
僕はにっこり笑って答えた。
「君がもう少し小さかった時は、注射の時に『いたいのいたいのとんでいけー』って言ったら凄く喜んでたよ。痛いのなくなったーって」
「わ、いつの話だよ!!やめてよ先生!!」
笑い合う僕らの姿を、デスクの上の写真の中の母は優しく微笑んで見ていた。
その他
公開:24/02/27 07:38

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