宇宙船地球号

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「エネルギー補填装置異常なし!」
「探索装置異常なし!」
「尾翼コントロールシステム異常なし!」


「よし、これで飛べるな」

「はい、船長!やっとですね」

「ああ。ここまでよう頑張った。今宵は宴じゃ!」


船内は拍手喝采に満ちていた。

その晩は、30人の船員が皆でせっせと飯を作り、酒を呑み明かし、くっちゃくっちゃ喋り倒した。


「最高の幸せってのはこのことだよな」


船員の1人が涙を浮かべながら、家族の集合写真に呼びかける。宴会場とは裏腹に、船員達の寝る各々の部屋は、いつもよりしんとしていた。


その翌朝のことである。

「ついに地球へ旅立つ時が来た。みな、故郷に敬礼せよ」

ラッパと共に起き上がった船員達は、みな一様に青い星へ右手を挙げた。


「これより出発する!」


船長はこう宣言したきり、部屋から姿を現さない。


地球は既に千年経過しているとついに言えなかった。
SF
公開:24/02/25 23:51
更新:24/02/26 15:13

かずま( 関東地域 )

2023/10/19に参戦した新参者です。忌憚のないコメントお待ちしております。

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