弾春

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立春も十日を過ぎた頃、福の神から節分豆が届いた。
合掌していただく。長年の豆まき合戦も形式と化し、今やお歳暮並みの贈答品だ。豆はぶつけるものでなく、炒って食べるもの。鬼の僕でもそれくらい知っている。

『はじける豆。賞味期限は今日中です』
のし紙に書かれた伝言に首を傾げる。節分にしては遅いし、手違いでもあったのか。不安を抱えつつ豆を火にかける。
――ポン!と鍋の豆が突然はじけた。
立て続けの破裂に驚き、頭の角を押さえる。爆竹の様な音と勢いはしばらく続き、やがて音が止む頃には、甘くほろ苦い香りが漂ってきた。

鍋の中でこげ茶色に染まった、不思議な形の豆を見つめる。
びっくりしたけれど、おかげで長年の間に積み重なった、照れや恥の気持ちが蹴り飛ばされた様だ。

賞味期限は今日中だったな。鍋を片手に鬼ヶ島を飛び出す。
今から行くから一緒に食べよう。
胸の奥に火がともり、鼓動のはじける音が聞こえた。
青春
公開:24/02/19 17:08
月の音色 月の文学館 テーマ:はじける

創樹( 富山 )

創樹(もとき)と申します。
前職は花屋。現在は葬祭系の生花事業部に勤務の傍ら、物書き(もどき)をしております。
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ベリーショートショートマガジン『ベリショーズ』
Light・Vol.6~Vol.12執筆参加
他、note/monogatary/小説家になろう など投稿サイトに出没。

【直近の受賞歴】
第一回小鳥書房文学賞入賞。2022年6月アンソロジー出版
愛媛新聞超ショートショートコンテスト2022 特別賞受賞

いつも本当にありがとうございます!

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