商人の過失

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活五郎と名乗るその商人は、伊豆へと向かう長路の宛ら、とある茶屋で甘酒を一升ほど拵え、がぶがぶその土地の銘酒とやらを呑んでからには、千鳥足でその場を後にした。

彼は一人旅を好み、津々浦々、骨董品を売り捌き、その利鞘で酒と少々の食い物を嗜み生きている。


「おめえさんの嫁はどんな面してやがるんだい? え? それかおいらに見せてみろ、おいらが気に入ったらそれは本物だっぺな、だけんど、そうじゃねえならたけぇ花魁でも拵えるか、もっと麗しき方に取り替えたらええべさ」


伊豆近くの城下町で一人の青年と意気投合した商人は、つい口が滑って青年の妻にさがな口を吐いてしまった。

すると青年は、頓に小刀を商人へ向けた。


「無礼者め!只今のことを拙者に詫びよ!」


驚いた商人は、勢い余ってその場で転げ、持っていた甘酒の小樽がひっくり返って口の中へ嵌まった。

そしてそのまま酒に溺れて還らぬ人となった。
その他
公開:24/02/19 02:05
更新:24/02/19 20:55

かずま( 関東地域 )

2023/10/19に参戦した新参者です。忌憚のないコメントお待ちしております。

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