ハイブリッド薪ストーブ

友人のKが、新築した自宅へ招いてくれた。
「これ、ハイブリッドの薪ストーブなんだ」
彼は、自慢の薪ストーブを見せてくれた。
「へえ、薪ストーブにもハイブリッドがあるのか。薪と何のハイブリッド？」
「まあ、すぐにわかるよ。ところで、失恋の痛手は少しは癒えたかい？」
彼は心配してくれた。僕は少し前に、失恋したことを彼に伝えていた。
僕は失恋の顛末と、まだ癒えない辛さを話し始めた。
薪ストーブは徐々に火の勢いを強め、暑いくらいだった。

「聞いてくれてありがとう」と彼に言うと、
「こちらそ」
と笑顔を返し、彼は続けた。
「このストーブ、薪と感情のハイブリッドなんだ」

人から吐き出されたどんな感情でも燃料になるが、辛い感情の方が、良い燃料になるのだそうだ。
毎日、誰かがストーブのそばで感情を吐き出していれば、ほとんど薪は要らない、と彼は言った。

僕の失恋話は、燃料としておおいに役立ったらしい。