透明人間になる薬

天才科学者に”透明人間になる薬”を依頼した私。
その薬が完成したと聞き、喜んで飲んだ。
体が熱くなる。全身が煙を上げる。
煙が収まると、私は透明人間になっていた。
さすがだな。まさか壁をもすり抜ける体になっているとは思ってもみなかった。
この身体は壁をもすり抜ける為か、服は床に落ちてしまっている。全裸だが透明人間なので気にしない。
覗きを思う存分楽しんだ後、私は元に戻る薬を要求した。
…おい。話を聞いているのか？
肩を叩こうとする私の手は天才科学者の体をすり抜けた。
そこではたと気が付く。もしかして私、死んでいるんじゃないか？
きっと薬の熱で私の体は蒸発してしまったんだ！
その証拠に今、この部屋には死神らしき者がうろついている。
急いで隠れるも、すぐに見つかった。見つかったんだが…そのまま素通りされた。
…私は死んでいるかもしれない。ただの透明人間かもしれない。
その答えは誰にも分らない。