僕の好きだった女性

僕が好きな女性が今日、目の前で奪われた。
その女性は小さな道場で師範をしている。
強さと美しさ。その両方に一目惚れした僕は女性と二人、訓練に明け暮れる。
「キミ、筋がいいね。その調子ならすぐに私より強くなれるよ」
自分より強い男が好きだと話す女性。
だから僕は決めている。この人より強くなって、告白するんだ！と。
…そんな思いはあっさり踏みにじられた。
突然道場にやってきた粗暴な男に女性は負けた。
「約束だ。俺の女になってもらうぞ」
そう言って男は女性に跪くとその薬指に指輪をはめる。
「お前にプロポーズする為、俺は強くなった。俺を強くしてくれてありがとう。今度は俺がお前を強くします。だから、俺と結婚して下さい」
粗暴だが紳士的な態度。
道場の入り口では男の応援と思わしき人達が固唾を飲んで見守る。
「…はい」
女性が男のプロポーズを受け入れた。上がる歓声。
清々しい程に、僕は戦わずして負けた。